盛大に咳き込んで、ようやく落ち着いたあたしはすっかり涙目だ。
「で、お泊まりしてるんだから、してるよね。」
まだ言うか?じろりと睨むあたしを、さおりは一緒に頼んだケーキを頬張りながら楽しそうに見る。
そんなさおりから目を逸らして、あたしは躊躇いがちに呟いた。
「・・・・・・してない。」
「え?」
目を見開いてさおりは全ての動きを止めた。横目で見たさおりの目には、信じられない、と驚きが表れている。
「・・・・・・」
「えっと、それって、まゆが拒否してんの?」
あたしは黙って首を振る。
「彼氏さん・・・あ、大事にされてるってこと、だ。そういうことだ。うん。優しいなぁ。」
俯くあたしに気を遣ったのだろう。さおりは何か言いかけて止めたあと、声の調子を変えて彼を称えた。
「ねぇ、ほんとにそう思う?」
あたしは目を伏せたまま、思い切って聞いてみた。
あたしより恋愛経験値が高いさおりなら、男性の考えていることもわかるんじゃないかと思って。
かずくんとお付き合いを始めて3ヶ月が過ぎた。
別にそれがなくてはならないものだとは思っていないし、急ぐ必要もないのだろうけど。
かずくんのスキンシップは相変わらず多い。でも、キス以上のことは何もしてこない。
お泊まりに行けば同じベッドで夜を明かすけど、本当に“一緒に寝る”だけなのだ。
実のところ、少し不安。
本当はあたしより大事な人がいるんじゃないかって・・・。

