あたしたちは穏やかに2人の時間を過ごしている。
それはそれは穏やかに。
まったく、何事もなく。

「まゆの急展開にびっくりだよ。」

年明け、かずくんのことを報告したらさおりは目を丸くしてそう言った。でもその後「よかったじゃん」ととびきりの笑顔で抱きしめてくれた。

バレンタインには初めて1人でチョコレートケーキを焼いてプレゼントした。
形はイマイチだったけど、味はママが作るものと遜色なかった、と思う。
同じものを送ったパパも褒めてくれたし。

ホワイトデーには、お返しにと小さなジュエリーボックスをもらった。
蓋の部分にはレースとサテン地の大きなリボンがあしらわれた可愛らしいデザインで、中には色とりどりのキャンディーが入っていた。「中身はこれからプレゼントする」って。



そんな風に冬が過ぎて、4月、あたしの大学生活は2年目に入った。

オリエンテーションを終え、今日はさおりと一緒に大学近くのファミレスに来ている。
履修科目を組むために、あたしたちはテーブルを挟んでシラバスとにらめっこしている。
出席や課題のこともあるし、今年度もできることなら協力体制を取ろうという考えだ。

「あー、疲れるー。」

さおりはため息をついて、アイスティーに手を伸ばす。
半分ほど飲むと、ストローを咥えたまま「ところでさぁ」とこちら側に身を乗り出した。

「彼氏さんとは順調?」

「・・・うん、たぶん。」

あたしはシラバスを見ながら答える。

「たぶんってなによ。でも、いいなぁ・・・。」

さおりがあたしから遠ざかって、背もたれに体を預けて苦笑いするから、あたしは手を止めてさおりを見つめる。

「いいなぁって、新田さんと何かあった?」