少なくともこの女子会的なダイニングテーブルでは、あたしの交際は祝福されていると実感。ホッとした。
あっちはどうなんだろう・・・?
ちらりと見遣るリビングも、穏やかな雰囲気にしか見えないのだけどなぜだか不安。
そんなとき、来客を知らせるチャイムが鳴って、直後玄関ドアが開く音がした。
迎えようと思って立ち上がる間もなく、入ってきた人物にあたしは驚いた。
「わぁ、紘さんだ。」
「よぉ。」
もう何年もまともに口をきいていなかったその人は、昔と変わらない笑顔であたしを見た。
かずくんのお兄さん、紘明さん。
「かあさん、人使い荒すぎだろ。この店、職場と反対方向じゃないかよ。」
手にしていた箱を持ち上げ洋子おばさんを鋭く睨んだかと思うと、一瞬にして人の良さそうな笑顔を貼り付けママの方に向き直った。
紘明さんの変わりように驚く。
あたしの知っている紘明さんは、簡単に言えば意地悪なお兄さん。少なくともあたしとかずくんにはいつも意地悪だった。でもいざというときは頼りになる人だったのも事実。
顔はいいんだから、優しくしてたらモテるだろうに・・・余計な心配か。
「香奈恵さん、これ、冷蔵庫入れとく?」
あれはたぶん、私とママのお気に入りのお店のケーキ。箱の大きさから言ってデコレーションだ。
うん、お願いとママが言えば、紘明さんはそのままキッチンへ入っていって冷蔵庫にケーキの箱を収納した。覗き込んだ冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出して、コートも脱がずに飲み出す。
「やだ、紘明、行儀が悪い。」
ふん、と洋子おばさんを一瞥して、紘明さんはビール片手にリビングへと向かっていった。
あぁ、またかずくんを虐めないといいんだけど・・・あたしたちがもうあの頃の子どもじゃないのはわかっているけど、心配せずにはいられない。

