「楽しいパーティの始まり、だな。」

いつの間にかあたしのそばに来ていたパパがぼそりと呟いて、かずくんをリビングに連行。
パパと明おじさんの間に座らせた。

あたしはあたしで、洋子おばさんに引っ張られ、ダイニングテーブルに連れて行かれる。
かずくんを振り返ったらちょうどこちらを見たかずくんと目が合う。
「大丈夫だよ。」
口の形がそう告げている。

「さぁ、食べましょ!久しぶりねぇ、こうしてみんなが集まるの。」

洋子おばさんはニコニコとワインの栓を抜き、料理に手を伸ばす。
向かいに座るママも機嫌良く微笑みながらワインを飲んでいる。
あたしはリビングの方が気になって、ひとりそわそわ落ち着かないでいる。

「まゆちゃん?かずくんなら大丈夫だから、楽しみましょう?ね?」

ママはいつもの意味深な笑みを浮かべながら、あたしにサラダを取り分けてくれた。
曖昧に頷いてそれを受け取ったけど、やっぱり向こう側が気になって仕方ない。
ママと洋子おばさんは顔を見合わせ「ふふふ」と笑う。

「ねぇ、まゆちゃん。まゆちゃんは和明でよかったの?」

突然の問いかけに「え?」と目を見張れば、洋子おばさんはワイングラス片手に続ける。

「もちろん、ウチのどっちかとそういう関係になったらいいなって私は昔から思ってたし、和明としては長年の片思いが実ってよかったんだろうし、まゆちゃんも和明のことを嫌いではないとは思ってはいたんだけど・・・まゆちゃん、強引に押し切られてない?大丈夫?」

洋子おばさんは困ったように笑っているから、あたしは「ううん」と首を振ったあとできる限りの笑顔を向けて答えた。

「そんなことないよ。あたしも、か、お兄ちゃんのこと、ずっと好きだったし。お兄ちゃんに告白してもらえてよかった。幸せ。」

ママたちの前で「かずくん」と呼ぶのが恥ずかしくなって、本人が聞いていないのをいいことに“お兄ちゃん”と言ってしまったけど。
それを聞いた洋子おばさんはパッと顔をほころばせた。

「そう?じゃあ、私、素直に喜んじゃおっと。」

そんなやり取りを黙って見ていたママは「ふふふ」とご機嫌にワインを一口飲んだ。