行き着く先は怖いパパの待つ家だけど、頼まれた買い物をしている間と走る車の中ではデートの続きという感じで不安を忘れられた。
けど、家に近づいていくとだんだん不安も大きくなる。
口数が減っていくあたしに気付いたかずくんが左手で頭を撫でてくれる。

「大丈夫だって。オレ、ちゃんと守るから。」

「うん。」

かずくんの「守る」は不思議と安心する。無条件に信じられるのはなぜだろう?
この人がいたら大丈夫。
この人の隣にいられたら。
あたしはもう一度頷いた。



けど。
程なくしてたどり着いた家の前で、あたしの足はやっぱり止まってしまった。
緊張と不安と。
そして漏れ聞こえてくる、楽しそうな笑い声に。

「あー、もう、大集合なんだな・・・」

隣に立つかずくんは苦笑い。

「ま、行くか。」

気負った風もなく、インターフォンを押すこともなく、かずくんは想いきりドアを開け、「お邪魔しまーす」と大きな声で呼び掛けながらあたしの体を中に押し込んだ。
あたしはされるがまま、まるで余所様のお宅にお邪魔するかのように縮こまって玄関に立たされ、ママが「おかえりなさい」と飛び出てきたのを見て、思わず俯いた。

「ママ・・・あの、」

「楽しかった?」

言い終わる前に聞かれて、伺うように覗き見たママは笑顔で、あたしは拍子抜けする。

「う、うん。」

「よかったじゃない。あ、かずくん、お遣いありがとうね。」

戸惑いがちに返すと、ママは嬉しそうに笑って、かずくんから荷物をと受け取る。
隣のかずくんを見上げれば、こちらは「ほらな」と微笑んでいる。

いや、問題はこのあと、だと思うんだけど・・・大丈夫、なのかな。