うつらふお姫様とちひさき約束


お兄ちゃんの腕の中で、心臓の音が大きく響いている。
2人分のドキドキ。

これって、現実、でいいのかな・・・?

身動いだあたしに気付いて、お兄ちゃんが腕を緩めた。

「これ、まゆには興味なかった、かな・・・?」

視線を落とした先の細長い箱。
まさかあたしのためだなんて思わなかった。

「ううん。開けてもいい?」

「いいよ。」

お店を逃げ出したあたしは、お兄ちゃんがどれを選んだのかわからない。
リボンを解いて包装紙を開く。
手が震えるのはどうしてだろう?緊張?期待?不安?
ビロード張りの箱の中にあったのは、あの時、一瞬で目が奪われたもの。

小さな雪の結晶モチーフのチャームがついたネックレス。
中央には青い石。

「・・・どう?」

お兄ちゃんは不安そうにあたしを覗き込む。

「あたしね、あそこでこれが一番素敵だって思った。」

お兄ちゃんの目を真っ直ぐ見ながら、嬉しい気持ちを精一杯伝えた。

「うん。オレもこれが一番まゆに似合うって思った。」

微笑むお兄ちゃんが、そのネックレスを取り出し、あたしの首へと手を回した。
首元へ顔を埋めるように体を近づけ、金具を止める。
体を起こして満足げに頷くと、あたしの手を引いて洗面所へと向かいあたしを鏡の前に立たせた。

「ほら、よく似合ってる。」

鏡越しに目が合って、あたしの心臓はまた跳ね上がった。
気持ちを伝え合っただけなのに。
ずっとそばで見ていた人なのに。
どうしてこんなにも違って見えるんだろう?

お兄ちゃんはもう“お兄ちゃん”じゃない。

ドキドキしっぱなしで頬を染めるあたしの胸元で光るネックレス。
そんなあたしを見ているお兄ちゃん。
胸が一杯になって、涙が零れた。