うつらふお姫様とちひさき約束


お兄ちゃんに手を引かれるまま、入ったのはジュエリーショップだった。

「えっ・・・ここ?」

あまりにお兄ちゃんに似合わないお店で、思わず心の声が出てしまう。

「・・・悪いかったな、似合わなくて。」

お兄ちゃんは恥ずかしそうに目を逸らして奥へ進んでいき、一角で足を止める。
そこにはキラキラと可愛らしいチャームのネックレスが並べてあって、思わずあたしも見入ってしまった。

「なぁ、女の子はこういうのもらったら嬉しいもん?」

突然降ってきたお兄ちゃんの声に心臓が止まるかと思った。

え?
女の子って言った?
お兄ちゃんの、好きな人・・・?

無言のあたしにお兄ちゃんは不安そうに続ける。

「・・・あれ?まゆはこういうの、興味ない?」

さっきまでのドキドキとは全然違う、イヤな動悸がする。

「・・・お、お兄ちゃんの付き合って欲しい買い物って、これ?」

隠しきれない動揺が声を震わせる。

「あぁ。最初のプレゼント、全然決められなくて・・・」

あたしの動揺に気がついていないらしいお兄ちゃんは、そんなことを言いながらショーケースを眺めている。

お兄ちゃんに好きな人がいる。
しかもその人に贈るプレゼント選びにあたしを付き合わせるなんて。

当たり前にあり得る可能性に、今の今まで気がつかなかった自分を呪いたくなった。
あたしはお兄ちゃんが好きだけど、お兄ちゃんは・・・。

ほんの数分前までの幸せが音を立てて壊れていった。