本当にあっという間にシャワーを終えたお兄ちゃん。
「待っている間、退屈しなかったか?」
と、いつものように濡れた髪をガシガシ拭きながら冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、あたしを見た。もうさっきみたいに挙動不審じゃない、いつものお兄ちゃん。
「大丈夫。それより、あたしこそ、勝手に来て迷惑じゃなかった?ごめんね?」
あたしも、これまた勝手に飲んだココアのカップを洗いながら、お兄ちゃんを見上げる。
「全然。迎えに行く手間省けて助かった。」
そう言って笑うお兄ちゃんは、いつもの緩い感じのジャージ姿じゃなくて、白シャツにブラックジーンズ。ダイニングのイスにはモッズコートとワンショルダーバッグが掛けられている。
久々に見るまともな私服姿につい見惚れていたら、「なに、惚れ直した?」と笑いながらおでこをつつかれた。
「な、なに言ってんのっ!」
慌てて否定したけど、自覚できるくらい顔は真っ赤で。顔を見られないように、お兄ちゃんに背を向けてコートを羽織った。
そんなあたしを笑いながら、お兄ちゃんもコートを着てリビングを出て行った。
「ほら、行くぞー。」
玄関からあたしを呼ぶ声が聞こえる。

