うつらふお姫様とちひさき約束


パパのびっくり発言に、いってらっしゃいと言えないままママを振り返れば、ママもニコニコと笑っている。

「うん、さすが滉さんねぇ。まゆちゃん、よく似合ってる。」

「え?え?・・・これ、パパが?」

そうよ。と頷いたママは、あたしの両肩をぽんぽんと叩いて「気をつけていってらっしゃい」と背中を押した。



バス停でバスを待ちながら、お兄ちゃんに「お兄ちゃんの部屋で待っている」とメールを送る。
いつも大学へ行くために乗るバスに乗り、いつもは降りないバス停で降りる。
なんでもないことなのに、何もかもが幸せ。
歩きながら頬を優しく撫でるファーが心地いい。
「パパ、ママありがと。」

鍵を使うのは2度目。
昨日の朝から主が不在の部屋は、カーテンが引かれ薄暗い部屋は冷え切っていた。

「おじゃましまーす。」

リビングのカーテンを開け、エアコンのスイッチを入れる。
そのままキッチンに入り、お湯を沸かす。
お兄ちゃんの帰りを待つ間、ココアを飲んで温まろう・・・見上げた時計はまだ11時前。

部屋がほどよく暖まってきた頃、お湯も沸き、あたしは漸くコートを脱いでココアを入れた。
ソファに座ってテレビをつけようとリモコンに手を伸ばしたとき、一冊のアルバムが置かれているのに気がついた。

何気なく手に取り開くと、そこには制服姿の、今より少し若いお兄ちゃんが笑っていた。
一緒に写っているのはやっぱり制服姿の人たちで、みんな同世代くらい。
次のページには、ジャージ姿のお兄ちゃんたち。机の周りに集まって何やら話し合っている風な写真や、眠そうな顔で歯ブラシを咥えている人、テキストをお腹の上にのせて眠っている人、そんな日常風景が続いた。
所々、写真が抜かれているのが少し気になったけど、あたしの知らなかったお兄ちゃんの姿をたくさん見ることができた。