あれから2週間。
手帳に書いた「お兄ちゃん」の文字を見るだけで幸せな2週間。

約束の日。

必要以上に朝早く目が覚めてしまったあたしは、やっぱりまだまだお子様なのかもしれない。
そんな自分が可笑しく思えるけど、そんなことどうでもいいくらい、やっぱり幸せなのだ。
これ以上の幸せなんかもうないのかもしれない。

おにいちゃんは迎えに来るって言ってくれたけど、あたしはお兄ちゃんの部屋で待っていようと思いついた。
昨日のうちに用意しておいた服は、可愛いって思って欲しいけど、甘くなりすぎないように心がけた。最後に袖を通した真新しいコートは、昨夜ママから「一足早いクリスマスプレゼント」と渡された。フードのファーも、切り返しで裾に緩く広がるラインも一目で気に入った。

あぁ、あたしもパパとママにプレゼントを買ってこよう。

そう思いながら鏡で全身チェックをして、リビングに降りる。
ママに出掛けることを告げて、玄関に向かうと、スーツ姿のパパが立っていた。

「パパ、お仕事?」

「そう。まゆはカズとデートだって?」

パパは大げさにため息をついてじろりとあたしを見た。
あたしはお兄ちゃんに会っていることも、遅くなる度送ってもらっていることも言っているけど、パパはいつも「ふーん」と興味なさそうに返事をして静観していたのに、今日はなんだかトゲがある。
あたし、浮かれすぎてたかな・・・

「で、デートじゃないよ。お兄ちゃんの買い物に付き合うだけだから。」

ブーツを履きながら一応の事実を伝える。
パパがこれ以上不機嫌にならないように、無表情を無理矢理貼り付けて。

「それ、立派なデートでしょ・・・ま、楽しんでおいでよ。」

いつの間にか後ろに立っていたママから鞄を受け取ると、パパはママの頬にキスをして「行ってきます」と玄関の扉を開けた。
そして、もう一度あたしを振り返ってぼそりと言って出て行った。

「姫、似合ってるよ、そのコート。」