その後、お兄ちゃんは「昨日のお礼」と言って、ファミレスで夕ご飯をごちそうしてくれて、いつものように家まで送ってくれた。
「今日も寄らないの?」
隣の家に視線を送りながら聞くと、お兄ちゃんは2度軽く頷いて視線を逸らした。
予想通りの返事だったから、あたしは苦笑いしながら車を降りた。
「ありがとう。おやすみ。」
「あぁ、おやすみ。」
いつもと変わらない言葉を交わして、あたしは家に入り、おにいちゃんは帰って行く。
でも。
あたしにはいつもと違う「約束」がある、そう思うだけで頬が緩むのを止められない。
ただいま、と声を掛けながらリビングに入り、ソファで雑誌をめくっていたママの隣に座る。
「おかえり、まゆちゃん。・・・かずくんとの予定はいつになったの?」
あたしの顔を見たママは、意味深な笑顔を浮かべながら口にしたのはお兄ちゃんとの約束の話だった。
「え?え?あたし、まだなにも言ってないよね?」
ママには電話もメールもしてない。ママどころか、誰にも言ってないのに。
「まゆちゃんの顔を見ればわかるわよ。デート、いつになったの?」
「・・・ママ、ちょっと怖い。」
失礼ねぇと言いながらもママはなんだか嬉しそうで。
嫌な顔をされなかったことに安堵したあたしは、お兄ちゃんとの約束の日を告げた。
「わかったわ。じゃ、ウチのパーティはイブにしましょう。滉さんには言っておくから、かずくんと楽しんできてね。」