うつらふお姫様とちひさき約束


びっくりしたのはあたしですよ、と昨日の出来事を思い出す。

「昨日は、いろいろびっくりしちゃったよ、もう・・・あたしは本当にお兄ちゃんのこと何も知らないんだなって。」

自分に呆れてあははと乾いた笑いが漏れてしまう。
お兄ちゃんの手はまだあたしの手を握ったまま。

「オレもびっくりだよ。」

そう言ってカップに視線を落としたまま浮かべたのは苦笑いで、そんな仕草も表情も目が離せないくらいかっこいい・・・それにしても、いい加減手を放してくれないと本当に勘違いしてしまう。でも手を放して欲しくないと思っているあたしもいる。
溢れてきそうな想いに無理矢理ふたをして、あたしはお兄ちゃんに続きを促す。

「お兄ちゃんは、何に驚いたの?」

お兄ちゃんはちらりとあたしの方を見て、握っていた手を放してコーヒーを口にする。
あたしは自由になった右手を寂しく思ったけど、なんでもない風に再びマグカップを両手で包み込んだ。

「・・・あの人たちの本気っぷり?」

「なにそれ?」

訳が分からないと首を傾げると、お兄ちゃんは「いや、こっちのこと」と立ち上がりキッチンでコーヒーのお代わりを入れて戻ってきた。

「それよりさ、まゆ、祝日に時間ある?」

「祝日って2週間後のあの祝日だよね。これといって予定はないけど。」

二人して目線は壁のカレンダー。

「じゃあさ、ちょっと買い物に付き合ってくれない?」