全ての講義を終え、あたしは約束通りお兄ちゃんの部屋へ向かう。
相談ってなんだろう?
あたしがお兄ちゃんに相談することはあっても、されることなんてなにもないと思うけど・・・。
そんなことを考えつつも、お兄ちゃんから呼ばれたことが嬉しくて仕方ない。
インターフォンを押せば、返事もないままドアが開いた。
顔を覗かせるお兄ちゃんの左頬には大きめの絆創膏。昨日擦り剥いたって言ってたっけ。
「おかえり。」
大好きな笑顔で、こんなことを言われたら、ここはあたしの家じゃないのに勘違いをしそうだ。
あたしたちが恋人同士だったら、このままハグやキスをしちゃったりするんだろうか・・・
「まゆ?」
玄関に立ち尽くしているあたしを不審に思ったおにいちゃんの声で我に返る。
あまりに嬉しくてつい妄想してしまった・・・お兄ちゃんとの・・・いけないいけない。
目を泳がせ、赤くなっているだろう顔をマフラーに埋めて、「おじゃましまーす」とお兄ちゃんの横をすり抜けてリビングへ入った。
「まゆ、昨日は助かったよ。ありがとな。」
あたしの後ろをリビングまで戻って、そのままキッチンへ向かいながらお兄ちゃんはあたしにそう言った。
両手にマグカップを持って戻ったお兄ちゃんは、いつものようにあたしの隣に座り、マグカップを1つ渡してくれる。
コーヒーの飲めない私のために、お兄ちゃんはココアも常備しておいてくれる。
暖かいカップで冷えた手を温めながら、口をつけたココアは優しく甘い。
あたしの右側でコーヒーを飲むお兄ちゃん。その左頬の絆創膏が痛々しくて、あたしは無意識に手を伸ばしそこへ触れていた。
「っ・・・」
「あっ、ごめん。痛かった?」
突然のことに驚いたように身体を強張らせたお兄ちゃんに、慌てて謝って手を戻そうとすると、お兄ちゃんは優しく微笑んであたしの手を握った。
「いや、びっくりしただけ。」

