そして今度は、一駅離れた警察署の前にいる。
今までのあたしには無縁の場所だ。
なにも悪いことしてないはずだけど、なんだか緊張する。
それにしても、こんな所にあたしを呼び出すなんて、お兄ちゃんいったい・・・。
自動ドアを入ると緊張感が増した。
えっと、受付の人に名乗ればいいんだよね・・・と、入って右側に見つけた「受付」のカウンターの前に立つ。
「あ、あの・・・すみま・・・」
「はい、何かご用ですか?」
言い終わる前に受付とは違うところから声を掛けられ、振り返ればそこには超絶美女。
・・・の女性警察官。
「はい。あ、おにい・・・相澤和明にこれを頼まれて・・・」
胸に抱えた紙袋を渡そうとすると、あぁ、と頷いて
「今、呼びますね。」
と、カウンターの向こう側にいたスーツ姿の若い人に「奥の相澤くん呼んでください」と声を掛けた。
「すぐ来ますから、ここでお待ちくださいね。」
カウンター前のソファを勧められ、あたしは会釈して座った。
隣に美女も座る。
お兄ちゃんと同年代だろうか・・・きれいにまとめられた髪とそれによって露わになるうなじが彼女の美しさを際立たせている。
「私、交通課の青木といいます。相澤くんとは同期なんですよ。」
「・・・・・・・あ、あたし、加藤真悠莉です。」
突然始まった自己紹介に、あたしはあたふたと頭を下げた。
「えぇ、聞いてます。本当に可愛い。」
凛々しい美女がふわりと微笑んだ姿にドキッとする。
こんな美女が警察官だなんて。モデルでも通用しそう。
あぁ、この人もてるだろうなぁ・・・あたしにはないものをたくさん持っていそう。お兄ちゃんの横にこの人が立つ姿を想像すると妙にしっくりとする。やっぱりお兄ちゃんとあたしじゃ釣り合わないだろうな。とりとめのないことが次々と浮かんでくる。
・・・ん?待って。聞いてる?あたしのことを?
「あ、あのっ、聞いてもいいですか?」
「えぇ、なに?」
慌てふためくあたしに、青木さんはまたふわりと微笑む。
「あの・・・あたしのことって・・・」
「まゆっ!」
呼ばれて振り向くと、お兄ちゃんがこちらへやってくるのが見えた。
その姿を見た途端、青木さんとの会話やそこで生じた疑問は一瞬で吹き飛んだ。
え?
お兄ちゃん・・・・・・・警察官だったの?

