カチャリ、と小さく音を立てて鍵が開く。
あたしは今、お兄ちゃんの部屋にいる。
「おじゃましまーす。」
主不在の部屋に一応声を掛けて足を踏み入れ、迷わず寝室へ向かう。
初めて入るお兄ちゃんの寝室。
落ち着いた色合いで統一されたお兄ちゃんらしい部屋。片付いているけど、僅かに乱れた寝具にお兄ちゃんの気配を感じてちょっと落ち着かない。
ベッドから意識的に視線を外して、先ほどお兄ちゃんに指示されたとおりクローゼットの扉を開ける。
あたしと違って几帳面なお兄ちゃんだから、クローゼットもきちんと整頓されていて目的のものはあっさり見つかった。
「これ、でいいの?」
手にしたものをまじまじ見ながら、思わず声が出てしまう。
でも当然返事はないから、あたしはそれを鞄に入れて部屋を出た。