「・・・・・・あ、でも、オレ、香奈恵さんには教えたような・・・え、まゆ、香奈恵さんから聞いて・・・?」
「・・・聞いてない。」
ママは知っていたなんて!それも知らなかった!
どうしてママはあたしに教えてくれなかったんだろう?
ちょっと悔しくてお兄ちゃんを睨んだら、
お兄ちゃんはポケットからスマートフォンを取り出し自分の連絡先を表示する。
「それは悪かった。すまん。」
謝りながらあたしにそれを貸してくれた。
あたしは素直に受け取って、“お兄ちゃん”を登録する。
「次から行くときは連絡する・・・」
電話を返しながら言う。
「おぅ。何かあったときも連絡しろよ?」
そう言ってくれるお兄ちゃんに、あたしは笑顔で頷く。
お兄ちゃんはスマートフォンをポケットにしまって、車を再び発進させた。
公園からなら歩いてもすぐだったけど、それでも玄関先まで車を付けてくれたのはお兄ちゃんの優しさだろう。
イヤでも目に付くスカートの染み。
「あ、お兄ちゃん、ママに会っていく?なんなら、うちでご飯食べていけば?」
シートベルトを外しながら、聞いてみる。
「・・・あー、香奈恵さんの飯には惹かれるけど今日はここで。まゆの家に行ったら、隣にも顔出さなきゃならないだろ?正直面倒くさい。うん、本当に面倒くさい。」
お兄ちゃんが思いきり渋面を作るから、あたしも苦笑いする。
言うまでもなく、あたしの家の隣は、お兄ちゃんの実家。
最近は滅多に顔も出さないらしい。
「行けばいいのに。洋子おばさん、お兄ちゃんの帰り待ってると思うけどなぁ。」
「いいんだよ。」
ふーん、と相づちを打ちながらあたしはドアに手を掛ける。
「あ、まゆ。」

