お兄ちゃんは前を向いたままのくせに、そんなあたしを可笑しげに微笑んで、すぐに顔を引き締めて続ける。
「でも、今日は面倒なことになってた。」
「うぅ・・・」
苦々しい。返す言葉もない。あたしはがくりと項垂れた。
「オレ、結構、頼りになっただろ?」
「う・・・ん。」
あそこでお兄ちゃんが現れなかったらあたしはどうなっていただろう・・・考えるだけで怖い。
「だから、もっとオレを頼れ。いや、今日みたいに必ず助けられると言い切れないのがオレとしても苦しいところだが・・・。」
お兄ちゃんは相変わらず前を向いたままだ。
脇見運転されては困るのだけど。
前を向いたままの表情は硬く、心なしかハンドルを握る手にも力が入っている気がする。
「・・・わかった。」
「おぅ。」
あたしの返事に満足したようにお兄ちゃんは表情を和らげた。
目に見えない何かが重苦しい空気を包み込んで隠してくれた気がして、やっと2人の間の空気が穏やかになった。
この角を曲がれば住宅街。
あたしたちそれぞれの実家はもうすぐだ。
「まゆ、前から言おうと思っていたんだけど・・・」
「なに?」
「オレの所来るときさ、連絡してから、とは思わないの?」
決してあたしを責める感じでなく、むしろ戯けた感じに笑いながらお兄ちゃんは聞いた。
「あー。それはね・・・無理、だよ・・・」
「は?」
予想外の返事に驚いたのか、お兄ちゃんらしからぬ急ブレーキで車は急に止まった。
ちょうど近所の公園の前。

