お兄ちゃんに抱えられてなんとかリビングに入り、ソファに座らされた。
隣に座ったお兄ちゃんは、もう大丈夫だとあたしを安心させるように右手であたしの冷たい手を握りしめ、左手で背中を撫でる。
無言で。
お兄ちゃんの体温であたしの手も温かくなってくる。
一定のリズムで往復する手は心地よくて、気持ちも落ち着いてくる。
ようやく涙も止まって、小さく深呼吸する。
それを合図に、お兄ちゃんがあたしの顔を覗き込む。
「まゆ、少し落ち着いた?」
酷い顔だろうな、と思いつつ、うん、と頷いたら、お兄ちゃんの手があたしから離れた。
「・・・で、あいつ、何者?」
え?
問われた言葉に思わずお兄ちゃんを見れば、見たことのない険しい表情であたしのことを見ていた。
怒ってる・・・?
「だから。あの強引な男は何者なの?」
・・・あぁ、新田さんのことか。
あの思惑的な笑顔が思い浮かんで、一瞬恐怖がよみがえる。
ギュッとスカートの染みの部分を握りしめる。
「あ、あの人は、サークルの先輩で、友達の彼氏。」
「それで?」
それで?それだけだけど・・・状況を説明すればいいのかな・・・?
お兄ちゃんの表情はまだ険しい。
「1人でお茶してたら、新田さんとぶつかっちゃって、スカート汚れちゃって・・・」
お兄ちゃんは黙ったまま頷いて、続けて、と先を促す。
「思いの外目立つから、ウチに来ないかって。さおの・・・友達の着替えがあるからそれを貸すって。あたしは、断ってここへ来たんだけど・・・」
「オレはいなかった、か・・・すまん。」
「ううん。あたしが勝手に来たわけだし。・・・で、諦めて帰ろうと思ったら、あそこに新田さんがいて。」

