車から降り立ったお姉さんは、大事そうに何かを抱えていた。
その「何か」は、ほわほわと柔らかそうで、暖かそうで。
それを確かめたくて駆け寄ると、お姉さんは目線を合わせるようにしゃがみ込み、抱えていた物を見せてくれた。
・・・うっわぁぁぁ・・・
『かずくん、可愛い?』
聞かれて声もなく頷いた。
新緑の柔らかい風に包まれて、ここだけ時間が止まったかのように一瞬も目が離せない。
『かずくん、この子、わたしたちのお姫様なの。かずくんもこの子のこと、守ってくれる?』
目線をゆっくりお姉さんに戻すと、荷物を抱えたお兄さんもそこに立っていて、二人は優しく僕を見ていた。
うん。僕も、守る。
声が掠れてうまく出なかったから、頷いた。
でもさっきより力強く。
『ありがとう。よろしくね。」
お姉さんが優しく微笑む。
お兄さんも嬉しそうに僕の頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
20年前の記憶。
出会いの記憶。
誓いの記憶。

