運転席の窓をコンコンと叩く。
おにいちゃんはあたしを気まずそうに見つめて窓を下げてくれた。
「まゆ・・・黙ってて悪かったよ。」
「もういいよ。あたしもいい加減子どもっぽいことしてごめんなさい。」
「いや、まゆは別に悪くないから・・・」
「お兄ちゃん、寂しくなったら会いに来てもいいからね?」
「っ・・・!」
俯いていたお兄ちゃんがバッと顔を上げたかと思うと、その顔はみるみる赤くなっていく。
「やだ、お兄ちゃん。なに照れてんの?」
「いやっ、子どもくせに・・・とびっくりして・・・いや、まぁ・・・元気でな。勉強、頑張れよ?」
左手で顔を半分隠して、まいった、と訳分からないことを言う。
「元気でって、もう会えないみたいじゃない?帰ってくるでしょ?会社、遠くないんだよね?」
「ん・・・まぁね。そうだな、時々帰ってくると思う、けど。」
「じゃぁ、お兄ちゃんもお仕事頑張ってね!」
あたしはお兄ちゃんの車を見送ろうと、一步後ろに下がる。
「あ、まゆ・・・」
「なに?」
「・・・許してくれてありがと。」
「・・・うん・・・」
「じゃ、行くわ。」
お兄ちゃんの車はあっという間に見えなくなった。