着替えてダイニングに行くとパパの姿がない。
「あれ?パパは?」
「んー?もう戻ってくるんじゃない?」
壁の時計を見上げて、ママが答える。
「どこ行ったの?」
イスに座って既に用意されていたオレンジジュースを一口。
「んー?かずくんのとこ?」
向かいに座ったママはコーヒーを啜りながら意味深に微笑んだ。
「っ・・・はぁっ!?え?え?・・・いや、えぇー?」
「やだぁ、まゆちゃん。そんなに慌てなくても大丈夫よぉ。滉さん、かずくんに何かしたりしないわよぉ。」
このおっとり口調に中年と言われる今も若く見えるほんわか容姿。
なのに全てお見通し風な物言い。
実はママが一番怖いタイプなんじゃないだろうか。
そして一番頼りになるのも。
「あ、あたし、迎えに行って来ようかな・・・?」
動揺隠せぬまま立ち上がれば、ママはどうぞと笑う。
「かずくんに言いたいこと言ってきたらいいわ。滉さんのことちゃんと連れて帰ってね?」
一応、と口実まで作ってくれるママには敵わない。
にこにこ顔のママを横目に、あたしはあたふたと外へ向かった。

