「あー、これはたぶん、怒り心頭で涙腺が壊れたんだね。なんか知らなかったのあたしだけみたいだしっ・・・」

ゴシゴシ擦って涙をなかったことにする。
パパはじっとあたしの目を見る。
些細な感情も見逃すまいと。

昔からそう。パパもママも過保護すぎるのだ。
あたしはもうすぐ高校生なのに。

・・・あぁ、そうだ。

あたしはもうすぐ高校生なんだ。
お兄ちゃんなんてとっくに成人してる大人だ。
それに。
あたしたちはただの幼なじみじゃないか。家が隣同士の他人。

なのに、さっきのあたしったら。
なんて子供染みた態度。
あーぁ。
これじゃまわりは過保護にもなるよね・・・反省。

「パパ、大丈夫だよ。よく考えたらあたしも悪かったんだと思う・・・あたしが甘えすぎたんだよね。お兄ちゃんもこんな子どもの相手、してらんないよねぇ・・・あはは。」

自己完結して笑うあたしを何とも複雑な表情で見ていたパパが、はぁーと一息ついてぽんぽんと頭を軽く叩く。

「わかった。・・・よしっ!朝飯にしよう。着替えておいで。」

あたしは頷いて部屋に向かう。
上がり掛けた階段の途中で、キッチンから少し顔を覗かせたママと目が合った。

何か言いたげな表情だったけど、あたしは苦笑いを返して逃げるように階段を駆け上がった。