うつらふお姫様とちひさき約束


「・・・オレは“義姉さん”とでも呼べばいいのか?うげー。」

そんなあたしたちの様子を黙って見ていたかずくんが、渋面を作って口を挟んだ。

「うげー、はこっちの台詞よ!失礼ねっ!」

都和さんも顔を顰めて応戦する。
あぁ、そんな顔、美人な花嫁が台無しですよ・・・なんて、都和さんとかずくんのやりとりを面白く見ていると、紘明さんが大きな溜息を吐いた。

「それ、ここでやり合う必要はないだろうが・・・それより、まゆ、和明に飽きたらいつでもオレのところに来いよ。大事にしてやるから。」

ギョッとして隣に立つ人を見上げれば、口元にはいつもの意地悪な笑みを浮かべていて、肩にポンと置かれた手はグッとあたしを抱き寄せようとする。
慌てて距離を取ろうとしてよろけるあたしを支えてくれたのは、紘明さんでもかずくんでもなく、都和さんだった。

「ちょっと紘明っ!いくらまゆりちゃんのことが可愛くても、結婚したばっかりの花嫁の前でそれやるの止めてよねー!あいざ・・・和明も、ちゃんとまゆりちゃんのこと守っておきなさいよっ!」

あたしを抱きしめながら紘明さんを睨む都和さんを、彼は目を細めて見下ろすとニヤリと笑った。そして、あたしを都和さんから引きはがしてかずくんの方へ押しやって、都和さんの腰を抱き寄せた。

「妬くな、都和。オレにはおまえだけだって、わかってるだろう?」

「・・・っ!ばかっ、こんなときにそういうこと言わないでっ!」

紘明さんは意地悪な笑顔のまま目を逸らさずそう言いきるとそのまま都和さんに顔を近づけていく。都和さんは目を見開いて頬を染め、慌てて紘明さんの胸を押し返している。
横にいたあたしは、聞いているだけで赤面だ。
こんな大人な雰囲気、あたしの心臓はとてもじゃないけどもちそうにない。でも、紘明さんが都和さんのことを“かなり気に入っている”のはわかった。