その夜、姉貴は自分の部屋で静かに泣いていた。
「……あの人……全然、私のこと見ないの……。」
姉貴は机に顔を伏せて、何かを諦めたかのように泣いていた。
俺はそれをただ呆然と見ていた。
「あの人と居ても……何も感じないの。
キスしても、セックスしても……何も感じないの。
むしろ……悲しい。淋しくなるだけなのよ!!」
かすり声でなく姉貴は
あまりにも、惨めだった。
「……姉ちゃんは、何がしたかったわけ?」
誰よりも気高く美しい入家 さくらはもういない。
誰にでも愛されるお姫様はもういない。
「…わたしは……わたしは、安心したかったのよ!
私を見てくれる人がいるんだって、
私を愛する人がいるんだって、
安心したかったの……
それなのに……」
それなのに、長門 春海が残したものは 不安でしか無かった。
彼女はそう 言いたげだった。
「……姉ちゃん……それが、恋なんだよ。」
「えっ……」
「入家 さくらは長門 春海が好きなんだ。アイツに惚れてんだよ。」
……馬鹿な姉貴だ……
「……嘘よ……ありえないわ……
だって、こんな……苦しいわけがないわ!
こんなに重いわけないじゃない!!
なんで……なんでこんなに惨めなの……」
それが、彼女が初めて身を呈して払った代償なのだ。
何もしない、されるがままのお姫様が
初めて払った代償なのだ。
ただ自分を傷つけるだけの代償なのだ。

