桜が舞うこの季節…
私が大嫌いな日がとうとうやって来た。

「はぁー。」

朝から何回ため息を吐いたのだろうか…。

何回ため息を吐いたって、
どれだけ行きたくなくたって、

私にサボる勇気などないし、結果は行かなくてはならない。

よし!と、心の中で自分に喝を入れ
今日から通う学校へと足を踏み入れた。

少し震える肩。

「お!青斗じゃん」

ビクッー

いきなり背後から大きな声がして
思わず反応してしまった。

いつになれば、こういうのにビビらなくなるのだろう…

「んぁ?誰だっけお前」

青斗と呼ばれた男の人は、

髪は金色で、

耳には何個ついてるかわからないほどピアスをつけていて、

入学式だというのに制服を着崩していて、顔は…

「カッコいい…」

自然と開いた口から率直な感想が発せられて

「俺に惚れちゃった?地味子ちゃんは」

さっき青斗じゃん!と言った人が喚いてるのを無視して

私の顔を覗き込む彼。

私は、自然と溢れた言葉が聞かれたことに
動揺を隠せず顔が熱くなるのを感じた。

「俺さ、眼鏡かけていかにもゆーとーせいって感じの子タイプじゃないんだよね」

それだけ告げると変なものから逃げるかのように去っていった。

何あれ。最低…ホント意味わかんない。

別に優等生になりたいわけじゃないし…。
やっぱりチャラ男は苦手だ。

そんな文句が次々と頭に浮かんだ。けど、

そんなことよりもまた、
中学の時みたいな日々が続くかもしれないという恐怖が私を襲った。

恐怖を振り払うように
心の中で"大丈夫、大丈夫"と呟いた。

「クラス表…」
辺りを見渡すと人だかりが出来いてあそこか!と、少し小走りで向かった。

近くにつれ少しの違和感を覚えた。

何故か、やけに女子の"キャー!"と言う声が聞こえる。

そんなにクラス良かったのかな?

大量の人混みをなんとか通り抜けようとしたら、
「あっ」

勢いで飛び出てしまった。

なんとか転けずに姿勢を保ち上を見上げた…

そこには、クラス表なんてなく
真ん中を開けて円を作る女子がいて

中心にいたのは、紛れもなくさっきの人だ。

早くここから逃げなきゃ!

けど、もう時すでに遅くてチャラ男と目が合ってしまった。

「追っかけてきたの?さっきも言ったけど…」

「違います。間違えただけです。すいません!」

私は頭を勢いよく下げ何か言われる前にその場を後にした。

クラス表は…あそこか。

今度は、間違っていなくて自分のクラスを確認する。

「桜木葵…桜木…」

あ、あった!3組だ!視線を下にしようとした時

一瞬で私の動きは停止した。

嘘…桜庭青斗ってさっきの?いやいやないない。
青斗なんていっぱいいるだろうし!そんな偶然…

「は?何でお前が俺の前なわけ」

あったよ。そんな偶然あったよ…
もう泣きたい。帰りたい。

言い返さないのが一番いいよねっ。

「無視?眼鏡のくせに生意気」

眼鏡は関係ないじゃん。てか、あんたは何様だよ!

「おい」

「キャッ」

彼の親指と人差し指で両頬を掴まれ
自然と彼を見る形となった。

「涙目になっちゃって可愛♡」

やだ。怖い…吐き気がする。

昔の記憶が次々と頭に浮かぶ。まただ…また
溺れてしまう。

いつまでも過去を引きずったって
変わらないのに、どうしても過去を忘れることなんて出来なくて。

「はな、し、て…」

震える声で何とか言えた。

そんな小さな頑張りを彼は認めてくれず…

「おいっ、その辺にしとけよ。泣きそうになってんじゃん」

優しそうな男子が止めに入ってくれたお陰で
私は彼の魔の手から逃れれた。

「ウザ。」

そう呟いた彼は、鋭い瞳で私を睨んだ。

身体中に寒気が走るのを感じ、
私は恐怖に陥った。

これから何が待ってるんだろう…。