「まだいたの」
それは私に聞いているのか、それともただ呟いただけなのか…。
彼は私を見下ろしたままニコリとも笑わない
「うん」
まだ幼さの残る声で彼女は答えた
「なに?」
「いや、なんでも、」
彼女が訝しげに聞くと少しだけ詰まった彼は気を取り直したように言った
「帰るぞ」
たった、それだけ、
それだけの言葉が少女の心を温かくする
「かえ、ろ」
少女もまた笑わずに答えた
いや、そう見えただけだったのかもしれない
彼には分かっていた
少女が少し俯く
「~〜っーーーーー!」
なんて言ったのかは聞き取れなかった
ただ少女の目が先程よりも綺麗な蒼になったのに気づいたのは彼も含めて誰もいなかった