「サクラちゃん、起きて」


「…帰ろうぜ」


「コイツいつから寝てんの?」


「2限の終わりから?」


「ぶっ通しで?」


「俺が見てる限りでは」


「「……」」





そんな会話が聞こえてくるようなこないような。



睡眠が1番大事な私にとって、それを邪魔されるほど殺意が沸くものは他にない。




夢と現実の境目で薄っすらと聞こえる会話に眉が少し動く。




けど、そこで誰かなんて確認する気もない私は再び夢の世界へと堕ちて––––––




「おい、起きろ」




低く唸るような声に邪魔され、行くことはなかった。



このまま無視して寝ることだって出来るけど、ビシバシと全身に感じる複数の視線を気にせずに爆睡できるほど私も神経図太くない。





「…何か用?」





仕方なく顔を上げれば会いたくもないいつかの誰かさん達。


こうやって待たれると逃げ場が無いから困るしウザったい。

まだ、放課後でそれも教室にコイツら以外に人が誰もいないって所が不幸中の幸いだ。




そこで初めて気づく。

周りが外の夕日に反映するように赤く染まっていることに。


6時か…寝すぎたな。




「行くぞ」



寝起きの頭でボーッとしてれば、不意に目の前の男に腕を掴まれそのまま私を無理やり立たせるとゾロゾロと出口に向かって歩き出す。




ーーーーはぁ。




だから、なんで私が連れて行かれなきゃならないんだって。



言ったところで答えてくれないのはわかってる。

きっと、私の腕を掴んだまま離さない奴の気まぐれだろうから。




普段の私なら為すがままになって終わり。


けど今は



「まだ、約束の日じゃないんだけど…仁人」




タイムリミットが0日になるまで会いたくない。



彼処に行けばイヤでも思い出してしまうから。



そんな私の想いを当然知る由もない仁人…と寛人たちの足は止まるはずもなくその足は一直線に裏門へと進んでいた。





また、同じパターンか。





抵抗しても無駄なのはわかっている。

仁人に腕を掴まれている上に、もし逃げられたとしても寛人と悠麻…それから加賀がいるんだからいとも簡単に捕まることくらい目に見えている。



仮にいくら私が腕力が強くたって、所詮は男と女。


力の違いなんて歴然としている。
それを自ら見ることになるなんてバカなことはしたくない。




わかってるからこそ、

つくづくイヤになる。



抵抗しない私を見てフッと口角を上げる仁人も。

無力な女である私も。