紅〜kurenai〜



「匡ちゃん?!!!」



先ほど出て行った仮眠室のドアを思いっきり開け、ソファーで新聞を読んでた匡ちゃんに掴みかかる勢いで迫る。




「ちょ、ちょ、ストップ!」




いきなり迫ってきた私に驚いて匡ちゃんは新聞紙を放りだし座ってるソファーの端までサササッと素早く移動した。




そんな匡ちゃんをスルーした私は



「なんであのバカがいるの?!」



そう叫んだ。



「…はぁ?」


話の趣旨が伝わらない私の叫びに匡ちゃんは顔を顰めるしかないのはわかってるんだけど、伝わらないもどかしさに何故かイライラする。




怒りが募ってきてる今、口で説明しても無理。
直接会わせたほうが早いと判断した私は座っていた匡ちゃんの腕を掴んで理事長室へと引っ張る。





キッチンを抜けて、理事長室のど真ん中にあるソファーに目を配らせれば先ほどと同じ格好で座っている人物がそこにいた。





「おお、来てたのか」



その人物にさも当たり前かの様に話しかける匡ちゃん。




「…どのくらい待ったと思ってんですか」



そう言って振り向いた奴のさっきのヤクザ並みの形相はどうした?と言いたくなるほど変わりすぎている声と顔。





…ああ、やっぱり。


見間違えではなかったみたいだ。




この流れってもしかして……



「コイツがなかなか起きねえから」



何故かペシッと叩かれた頭を摩りながら隣に立っている匡ちゃんを睨む。



口角をヒクヒクと引き攣らせている匡ちゃんと対照にニヤリと口角を上げる私。



そんな私たちを見て、怪訝そうに顔を顰める目の前の人物。



「そいつ、誰っすか?」



そりゃ、そうなるよな。


地味でさえない女子高生と理事長がまさに蛇に睨まれた蛙状態なんだから。

いやこの場合理事長と言うより、先…ーー



「……サクラさん?」



……こいつも見抜いてしまうのか。



チラリと匡ちゃんを見上げればすごい嬉しそうな顔をしているし、…諦めるしかないか。




















「久し振り……皇くん」








「はいっ」そう嬉しそうに笑った皇くんに内心は申し訳なさで一杯だったのを必死に隠した。