紅〜kurenai〜



「食い終わったなら早く準備して行け」


朝ごはんを食べ終え、いまだ学校に行く準備をせずにソファーでゴロゴロしている私に理事長の顔をした匡ちゃんの叱咤が飛ぶ。



けど、もう1限始まっちゃってるしな〜。
今から行ってもきっと悠麻のしつこい質問攻めにあうだけだろうし。


いっその事、サボッ…ーーー


「サボったら夏休み登校させるぞ」


「…ウザ」



やっぱり匡ちゃんには私の考えてる事なんてお見通しなわけで、速攻で却下された。



勝手に人の心の中を見抜くなって言いたいけどどうせそう思ってるのも見抜かれてるんだろうから何も言わずに睨んでおいた。




けど、理事長室から出てくるところなんて見られたら堪ったもんじゃないからやっぱり授業中に行くのが1番いい。



重たい腰をどっこらせと上げ、支度に取り掛かった。



洗面所に行って顔洗って。
歯磨きしながら制服に着替え。

再び洗面所に戻りもうすっかり見慣れてしまった長い”黒髪”を2つに分け三つ編みをする。




最後に瓶底眼鏡をかければ


「…完成」


鏡の中に映る自分を見て改めて思う。


「地味だなあ…」


いつ見てもどこから見ても地味だ。



そう思うだけであって、別にこの格好をする事に抵抗はない。
だって自分で望んだ事なんだから。


てか、むしろこの格好でいたいとさえ思う。







だから不思議なんだよね。


何で、仁人達がこんな私なんかに興味を持つのかが。






「…見慣れねえな」



丁度、洗面所に入ってきた匡ちゃんが鏡に映る”黒髪おさげに瓶底眼鏡をかけた私”を見ていた。




私も最初は見慣れなかった。

自分が自分じゃない気がして少し抵抗があったくらいだから。




「最初に会った時、何で私だってわかったの?」



匡ちゃんに初めて理事長室で会った時も、この匡ちゃんの言う見慣れない姿だったのに一発で私だって見抜いた。



最初は私も人違いですって言おうと思ったけど、匡ちゃん相手に騙せるわけがない。


そう思ったから観念したんだ。



「目とオーラだ」


「目とオーラ?」