「サクラ、起きろ」


「んっ…?」


「遅刻すんぞ」




そんな声が聞こえて目を開ければ、目の前にこの世にこんなにも綺麗な顔があるのかと疑いたくなるほどの男の人の顔が……って匡ちゃんね。


てか、なんで私の部屋にいるの?



まさか……


「…不法侵入?」


「アホか。よく見ろお前の部屋じゃねえだろ」



ったいなぁ〜。別に頭叩く必要はないでしょ!
なんて心の中で悪態つきながら周りを見渡せば見た事のない部屋。


というより昨日初めて見た部屋。



まあ要するに昨日あのまま家に帰るのが面倒になって仮眠室に泊まったんだった。



段々と覚醒してくる頭で自分が家にいない事に昨日の成り行きから振り返り納得して、壁にかかってる時計を見れば。




「…遅刻だ」



あと3分でHRが始まる時間。




起こすなら…ーーー



「もっと早く起こせとか文句言うなよ?」



「…」



仮眠室にあるキッチンに立つ匡ちゃんの口振りからして、だいぶ前から私を起こしてくれていたらしい。

現に、私が目覚めた時目の前にあった匡ちゃんの顔は呆れ顔の中にも若干疲れが見えた。




「ほら、飯食ったら準備しろよ」



キッチンで何かやってると思ったら朝食を作ってくれてたみたい。


ベッドから降りたもののソファーの上でダラっとしていた私に作ったそれを差し出しながら自分も床に座りテーブルの上で新聞を広げながら朝食をとる匡ちゃん。



「ん、ありがと」


ソファーから降りて匡ちゃんの隣に腰を下ろし「頂きます」と言ってからフレンチトーストにかぶり付く。



「あ、意外と美味しい」


「一言余計だ」


口の中にフレンチトースト特有の甘みが広がり味わってれば、隣からすかさずツッコミが入った。



…朝ごはんくらい静かに食べさせてよ。

こっちは匡ちゃんが料理できる事に驚きなんだから。