彼奴らの足音が遠ざかったのを確認してからある場所へと向かう。
先ほどまでサクラが飲んでいたもう既に冷め切ってしまってるコーヒーカップを片手に。
それをキッチンの流しに置いてそのまま奥へと進み仮眠室の扉を開ける。
「サクラ?」
呼びかけてみても返事はない。
風呂か?
そう思い洗面所の方へと向かう途中、視界の端に入ったベッドの上の塊。
「なんだ、寝てたのか」
タオルケットを頭まで被り丸まって寝てるサクラの頭をタオルケットの上から撫でる。
「ん…」
「起きたか?」
モゾモゾと動くと触れていたところのタオルケットがはだけ、覚醒しない寝ぼけ顔のサクラが顔を出した。
「匡ちゃん…?」
「ああ、なんだ?」
「もう終わったの?」
「ああ」
サクラの頭を撫でる俺の手に気持ちよさそうに身を委ね「そっか」と言う。
「もう少し寝とけ」
俺がそう言う頃にはもう半分夢の世界に飛び立っているサクラにタオルケットを掛け直し、静かに仮眠室を出た。
…気づかないわけがない、サクラの目の下の隈に。
安心しろサクラ。
此処にはお前が恐れるものは何もない。
だから、ゆっくり休め。
この時、俺はサクラがアレを抱いて寝ていたなんて知る事はなかった。
『ごめんなさい…』
眠りに落ちる前、サクラの口から漏れた声。
「タイムリミットまで、あと3日か…」
匡哉のそんな呟きに掻き消された。