紅〜kurenai〜





「そうか。ならせいぜい頑張ってあの子と接する機会を作るんだな」




俺は、手を貸さねえぞ。



「理事長の意見としては一般人をそっちに連れ込む事は反対だ。だが、1人の人としては本人の意思に任せる。吉にでるか凶にでるか。どっちに転んだとしてもそいつの人生だ。他人がどうこう言う問題でもねえ。やりたいようにやりゃいいさ」





失敗も成功のうち。


なんてことわざがあるように、やってみなけりゃ失敗か成功かなんてわかんねえ。


成功したならそれでいいし、失敗したならまたやり直せばいい。



一度きりの人生なんだから楽しんだ勝ちだ。
やりたいようにやったもん勝ちだ。





昔、口癖のように言ってたヤツがいる。

「やりたいようにやれよ」

いつしか周りに伝染して気付いたらそれをモットーに生きて、そうやって後輩たちを教えてきた。






だから、サクラ。


お前の好きなようにやれよ。



俺が……俺らが見守っといてやるからよ。






「じゃあ、俺たちはこれで失礼します」


「ああ」



ソファーから立ち上がり俺に一礼すると佐伯は黒崎と川崎を連れ去るように引っ張りながら出口へと向かう。




「…絶ってえ捕まえてやる」





理事長室を出て行く直前、黒崎の呟きが微かに聞こえた。






「失礼しました」





最後に出た川崎が扉を閉める直前。






















『アイ…。例えお前でも、サクラを傷つけたら俺らが黙ってねえぞ』







匡哉の口から無意識に呟かれた声は、扉が閉まる音に掻き消され誰にも届く事はなかった。