《匡哉 side》
––––––––––パタン
遠くで隠し部屋チックな仮眠室の扉が閉まる音が聞こえたのを確認してから声をかける。
「いいぞ」
今度はガチャリと扉の開く音がする。
「いきなりすいません」
顔を覗かせて早々、そんなことを言う来客者に多少イラッとくる。
そう思うんだったらいきなり来るんじゃねえよ。
「変わってないね」って彼奴は無邪気に笑うけど俺からしたら自分でもわかるほどあの頃から変わった。
「待たせて悪かったね。電話中で」
こういうところとか。
俺含め、全員が変わった。それも良い意味で。
集まれば昔に戻って馬鹿やるけど今はそれぞれがそれぞれの道を歩いてる。
その中でも1番変わったのは……
再び喜怒哀楽すべての感情を封印したサクラ、お前だよ。
まあ優しくて良い人な理事長の仮面を付けいきなり訪問してきた来客者に笑顔を向けてるあたり、俺も人のこと言えねえな。
「電話大丈夫なんですか?」
そう、気遣うのは無表情にも見えるが心なしか申し訳なさそうにしている黒崎。
どうやらここへやって来たのは佐伯だけじゃなかったようだ。
て事は全員いるのか?
サクラを仮眠室に入れといて正解だったな。
そんなことを考えながら「大丈夫だ」と黒崎に返す。
サクラがあそこから出てこなければ。
さっきまでサクラが座っていたソファーに座るように促し、中へ入ってくるのを待っていれば。
「お久しぶりです」
……どうやら全員じゃなかったみたいだ。
最後に入ってきた人物を見て思わず顔を顰めてしまう。
何時もは、と言うよりコイツがここに来るのは初めてか…。
佐伯と黒崎は何度か来た事あるけど、コイツが顔を見せるとは思ってなかった。
”ここに来る暇があるならーーを探したい”
きっとそう思っているだろう。
その証拠にコイツの顔が不機嫌極まりない。
無理矢理引っ張られて来たんだろうな。
今日じゃなければ、良かったのにな。
今日じゃなければ俺はいつも通りに佐伯と黒崎に接していたし、コイツを歓迎していた。
頼む。絶対にそこから出てこないでくれ。
仮眠室できっと寝てるだろう奴に心の中で願う。
「久しぶりだな––––––––––––”川崎”」
不機嫌極まりない顔でドカッとソファーに座ってる奴。
サクラに1番会わせたくない人物だ。
