紅〜kurenai〜



そこでふと気付いた。



もしかして…

明日からくる事になる教師って


「ねえ、匡ちゃん」


まさか、アイツではないよね…?




「あ、のさ。まさかとは思うんだけど…明日来…ーーーーー」





––––––––––––コンコンッ





恐る恐るといった感じで匡ちゃんに尋ねている最中に鳴ったドアのノックオン。




「はい?」



片手を顔の前に持ってきてごめんのポーズをとりながら小さく「悪い」と呟いてから外の来客に声を返す。



















「佐伯です」




なんかどこかで聞いたことのあるようなないような感じの声が聞こえたと同時に匡ちゃんのドアに向いていた視線が私へと返ってきたが。



「ん?」



何で私の顔見るの?



「あ、もしかして仕事関係?」


それだったら私は席外した方がいいに決まってる。


てか、そんな事ならもっと早く言ってくれればよかったのに。



遠慮なしに腰掛けていたソファーから急いで立ち上がりせっせとコーヒーの入ったカップなどを片付け始めていたら。





「仕事じゃねえ。獅子だ」


「はぁ?」



思いもよらない単語が匡ちゃんの口から飛び出した。

今、この人、獅子って言った?


うん、確かに獅子って言った。


何故。何故あいつらがここに来る理由があるんだ?




「理事長?」



再び外から聞こえてきた声に、今度は納得する。


通りでどこかで聞いたことのあるような声だったわけか。




「悪い、ちょっと待ってくれ」



再び少し大きめな声で外にいる人物に待てをかけてから、私に問う。




「どうする?今ここで彼奴らに会うのは避けたい。…奥の部屋にある仮眠室行っとけ」





どうする?と問うわりには、最後は強制的に行けと言われた。



何故彼奴らがここに来るのかという疑問は解き明かされてないけど、匡ちゃんのその判断は間違ってない。



今、ここで彼奴らに会うわけにはいかない。



私も匡ちゃんと同じ考えだから、匡ちゃんがデスクの引き出しの中から取り出し私に差し出している仮眠室のであろう鍵を素直に受け取った。




「キッチンの突き当たりにあるカーテンの裏に仮眠室の扉がある。終わったら呼びに行くからそれまで好きに使え」




キッチンの突き当たりにあるカーテンの裏の扉ねぇ。



随分と手の凝った構造になってること。