紅〜kurenai〜




そんな勿体ぶる必要あるのか?って心底思う。


最初は気にならなかったのに匡ちゃんにあーだこーだ言われてるうちに気になり始めてモヤモヤしてくる。

けど、考えることを極力したくない私は中々教えてくれない匡ちゃんに怒りが募る。



焦らされるのはあまり好きじゃ……ああ、そう言えばコイツは焦らされるより焦らすという悪趣味の持ち主だったね。



悪趣味の持ち主の顔を見る限り今言うつもりはないらしい。




「明日のお楽しみだ」



案の定、か。


クククと喉を鳴らして笑う匡ちゃんは、明日予想もしてなかった人物と対面した時の私の驚きの顔を思い浮かべてるのか単に私をいじって楽しいだけなのか。



今更だけど仁人よりも遙かに面倒な性格だ。



「だから明日、朝一でここ来いよ」


「…放課後でよくない?」



もう、どうでもいいやと思い始めた私はその私の知り合いであろう教師に会うのさえ億劫になってきた。

なんで朝っぱらから昔の顔見知りに会わなきゃいけないのかがわからない。



そんなことを私が考えてるなんてお見通しであろう匡ちゃんは


「授業中にお前のクラスに乗り込まれても知らねえぞ」


なんて、この学校では実際にあり得てしまう笑えない冗談で脅してくる。



普通は授業中に他の先生が乗り込んでくるなんてあってはいけない。というより無いのが普通で常識だ。その上、新米教師なんてそんなことできる立場でもないし、そんな事やったら採用早々残念だけど解雇される。



なんども言うけど普通の学校ならね。



この学校に普通も常識もあったもんじゃない。
まず第一に、理事長が匡ちゃんの時点で普通を求めてはいけなかったのかもしれない。


いや、匡ちゃんは至って真面目だよ?
優しいし周りの事よく見てるし臨機応変に対応出来るし礼儀もなってるし。



けど、なんて言えばいいんだろうか。

一般常識から見ると何か少しズレているというかなんというか。


匡ちゃんを含めあの人達は皆んなそんな感じだった。
その中で匡ちゃんが一番まともだったから完璧な人に見えていたんだ。



なんせ、あの人達のモットーは




”人生楽しんだもん勝ち”



だったからね。





そのモットー通りに自分生き方をしていた皆んな。



特にアイツはまさにその言葉通りだった。