紅〜kurenai〜



「あ、そうだ。一つ朗報」


「朗報?」


「ああ。明日新しい教師が来るぞ」



微妙な時期に転校してた私が言えることじゃないけど、思わずにはいられない。


なんで、夏休みを5日後に控えたこんな半端なく微妙な時期にやって来るのか不思議だ。




夏休み明けでいいじゃんって思うのは私だけ?
それともたった5日だけど少しだけでも長く学校にいたいのかな?
普通じゃないこの学校には珍しい教師が来るもんだ。



なんて感心してるけど



「朗報以前に、それ私に全く関係なくない?」


関連性すら見当たらない。

のに、そんな疑問を持つ私を、え?という顔で見つめてくる匡ちゃん。



………。



コイツ頭おかしくなったか?
それとも暑さにやられたか?



「関係ありまくりだろ」


「だからその関係性を説明しろっつーの」


どうやら、前者のようだ。



いつも思うけど、何も説明せずに簡潔に最後だけを言わないで頂きたい。
それなのに全てを理解しろなんてどんな神業だよ。



あの人達なら分かるかもしれないけど私には無理だ。



やめてくれって言いたいけど、言ったところでこれはもう匡ちゃんの癖みたいなもんだから直すに直せないしきっと本人も直す気ないだろう。



なんて呆れてる私を他所に



「お前がよく知ってる奴だぞ」



そう言う匡ちゃんの顔はすっごい楽しそう。


よく知ってる奴、ね〜。

当ててみろと言わんばかりの顔をしている匡ちゃんを横目に記憶を引き出して片っ端から顔を思い浮かべて行くけど、”教師”という仮面が似合う人が1人もいない。






「期待に添えなくて申し訳ないけど誰一人として思いつかないんだよね」



一通り全員思い浮かべたけどピンと来る人はいなかったから早速考えるのを諦めた。



「まあ俺も初めはビビったな」


「いや、そんな感想求めてないから」



私で想像できないんだから匡ちゃんも驚くのは想定内。


私が知りたいのはそんな想定内の匡ちゃんの感想よりもその該当の人物だ。