「おい、霜村」
不良校なのに朝早いHRにはほとんどの生徒が出席しているっていう結構不思議な現象に感心していた時、HRを終え教室を出て行こうとした担任がクルリと振り返り私の名を呼んだ。
まだ返事もしてないというのにドスドスと足音を響かせながら私に向かって一直線にやってくる。
あの顔と体型だけにある意味恐怖を感じた私は顔を引きつらせながら若干後退。
「お前、昨日どこ行ってた?」
「「は?」」
担任の突拍子も無い質問に疑問の声を上げたのは私だけじゃないようで。
けど、クラスに大して仲のいい友達なんて誰一人いないというのにこの質問に疑問の声が上がるのはおかしい。
じゃあ、誰…?
声のした方を辿って人物を確認しようと来た時––––––––––
「鈴ちゃん、それ聞いたら犯罪だから」
ガタリと椅子が引かれる音が隣から聞こえたと同時に何処かで聞き覚えのある声が耳に届いた。
「おお、新名!お前が来るなんて珍しいな!」
いや、鈴ちゃん。違うでしょ。
そこは「ちゃんと学校に登校しろ」でしょ普通。
「今日は珍しく朝からゲームしなかったから暇で仕方ないから来てやったの」
「あー、あれか前に言ってたマリカか」
「そーそー。なかなかクリアできなかったんだけど、昨日やっと出来たからさ!」
「よくやった!!」
「だろっ!!!」
普通を求めた私がバカだった。
生徒と先生とは思えない会話を繰り広げる担任と、ホントに珍しく教室にやってきた悠麻。
元々、会話に入るつもりなんて全くないがもう勝手にやってくれって感じだ。
さっきの聞き覚えのある声の正体は、男子高校生にしては少し高めの特徴がある悠麻の声だった。