「じゃあ、もう帰っていい?」
「送る」
「1人で帰れるからいいわよ」
ソファーから立ち上がり扉へと向かって歩き出す仁人にため息が出る。
「転校してきたばっかでここら辺あまり知らないんでしょ?迷子にならないためにも仁人に送ってもらいなよ」
なんてエセ紳士の寛人から優しい言葉を頂いたが、私にとっては仁人が一緒にいる方が迷惑だ。
それに
「今の時代、自分の住所を入力すれば道を教えてくれるスマートホンって言うとても便利な物があるの知ってる?極度の方向音痴か自分の住所を知らない人じゃない限り迷子にはならない」
”だから送迎は必要ない”続けてそう言うが「いいから行くぞ」という仁人の言葉に一蹴りされて終わってしまう。
「だからいらないってば」
人の話を聞け。
「俺が勝手に連れてきたんだ。送るのが常識ってもんだろ」
だったら初めからこんなとこに連れてくんじゃねーよ。
勝手に私の名前を入手して、新手な誘拐をして、散々俺様言動しといて何を今更常識なんてものを語ってんだ。
「サクラちゃん、仁人––––」
「あー、はいはい。言い出したら何が何でも意見を曲げないんでしょ」
悠麻に言われる前にさっき寛人が言ってたことを思い出し口にする。
「ホントに面倒な性格してるわねあんた」
そんなことを言う私を振り返り一瞥するだけで何も言わない仁人はそのまま部屋から出て行った。
結局、送られなきゃいけないのね私は。
部屋を出て行く私に
「じゃあね、サクラちゃん」
「またね」
「…」
悠麻と寛人の挨拶と蒼麻の鋭い視線を背中に受けて私は部屋を後にした。
タイムリミットまで
––––––––––––あと5日。
