「蒼」
自分の番になってもなかなか口を開かずに私をただただ睨んでいた悠麻じゃない青髪君に痺れを切らしたのか、寛人が一括するとしぶしぶ仕方なくといった感じで口を開いた。
目線は決して合わないけれど。
「新名蒼麻(ニイナ ソウマ)。絶ってぇ俺に近づくなよ」
最後の方はしっかりと目を合わせてくれた。
って言っても、絶対零度の目で睨まれただけだけど。
世に言う、女嫌いってやつね。
「もうわかってると思うけど、俺と蒼麻一卵性の双子。因みに二人ともサクラちゃんと同じクラスだよ」
けど、そのことに関しては触れない悠麻。まあ見れば誰でもわかるか。
「……」
いや、蒼麻、究極に嫌な顔してこっちを睨んでくるんでない。
文句あるなら私をあそこのクラスに入れた理事長に言え。
まあ、匡ちゃんに言っても無駄だろうけど。
……その前にあの人相を前にしたら文句言うどころではなく誰もが口を閉じると思う。
いや生徒たちの前では猫被ってるから恐怖を感じることはないか。
意味もなく''あの''匡ちゃんを出すことはないし、どちらかと言えばアイツの方が誰彼構わず凶悪な顔を向けていたから。
いまだに感じる視線をたどれば相変わらず蒼麻が睨んでいて。
そう、まさにあんな感じ。
アイツもあんな感じで周りのやつらを睨み付けていた。
「蒼麻、そんなに睨むなよ。サクラちゃんだって怖が……ってサクラちゃん?」
「…へ?」
不意に名前を呼ばれたもんだから、変な声が出てしまった。
「なんか固まってたみたいだけど大丈夫?」
そう言って私の顔を除き込んでくる悠麻には、さっき一瞬だけ見せた哀しい表情は残っていなくて。
……私の見間違いか。
「大丈夫だよ。珍しいくてちょっとボーッとしちゃっただけ」
アイツのこと考えていたなんて口が避けても言えない。
それこそ、平和に暮らすことなんて出来ない。
「サクラちゃん?本当に大丈夫?」
「……ッ大丈夫だよ」
もう考えるのはやめよう。
自分が苦しくなるだけだ。
張り付けた笑顔でいる私を睨む視線は変わらず…。
……アイツに比べれば蒼麻なんて可愛いもんか。
どんなに頑張っても、ここに…この空間にいる限り思い出さないっていうのは無理なのかもしれない。
