「サクラちゃん!」
「…へ?」
懐かしい臭いと空間に酔いしれ心苦しさを感じていれば隣の青髪君に名前を呼ばれた。
「コーヒー出来たよ?」
心配そうに顔を覗き込んでくる青髪君にハッとして視線を机に戻せば目の前に差し出されている淹れたてのホットコーヒー。
「す、すいませんっ!」
眼鏡のお兄さんから慌てて下皿とカップを受け取れば、気にしないでと笑われた。
……砂糖とミルクが添えてあるそれが何だか不思議に思えた。
「珍しいでしょこんな所」
私の向かい側に腰掛けた眼鏡のお兄さんは2杯目となるであろうコーヒーを優雅に飲みながらクスクスと笑って私に問う。
「あ、はい。まあ…」
珍しいどころか、逆に見慣れすぎて懐かしくすら感じていることがバレてしまわないように何とか平然を装って答えてみたけど隠し切れているのかわならない。
眼鏡の奥にある鋭い目が全てを透かしている気がしてならない。
「そっか。サクラちゃん俺たちのこと知らないのか」
そんな視線から逃れたくて目を逸らした時、タイミングよく青髪君が思い出したように声を発した。
「え?知らないの?」
それには眼鏡のお兄さんも本気でビックリしたようで目を見開いていた。
うん、まあ知ってるけどそこまで深くは知らないし
「知らない」
今はこう答えるのが1番いい方法だ。
「じゃあ、自己紹介でもしとく?」
確認を取るように仁人を見ながら言う眼鏡のお兄さんに便乗するように「賛成賛成!」と騒ぎ出す青髪君。
確認とったところで仁人はもう自分の名前言っちゃってるし、
「え、嫌。」
別に教えてもらうことに関しては正直どうでもいい。教えてもらったからって何かあるわけでもないし。
あ、でもそんなに有名有名言うなら悪用してみたいって一瞬思っちゃったけどまあそんなことはしないしすることもないだろう。
そんな感じの考えだったけど自分の事もとなればそれは別問題。
言ってる意味がわからないって顔で見てくる仁人と驚きと困惑が入り混ざった顔で見てくる青髪君と眼鏡のお兄さん。
「だから、嫌だって言ってるの」
自己紹介なんて自分の素性をバラすようなもんじゃない。
バレることはないけど、念には念を。
それに、”貴方達”には絶対自分の名前なんて明かしたくない。
いや、名前というより素性か。
現に、仁人にはバレちゃったるわけだし名前を教えても問題はない思うけど、、、
