「降りろ」
心地よい座席に身を預けてボーッとしていれば気づけば、目的地には付いていたみたいでそれだけ言うとさっさと降りていった仁人。
隣を見れば、銀髪はもうすでに降りていた様で姿が見当たらない。
「サクラちゃん?大丈夫?」
いつまでも降りてこないで車内にいる私を心配そうに外から覗き込んでくる青髪君はどうやら私を待っていてくれているみたい。
「ごめん」
あえて大丈夫とは言わずに外に出れば目の前に広がるデカイ古びた倉庫。
それを見たとき、「私はそういう運命なのか」と少し自嘲的な笑みがこぼれる。
別に今更、運命だとか何だとか信じないけどきっと一生縁が切れないことは自分が1番よく分かってる。
「早くしろ」
青髪君だけかと思ったら意外にも扉の前で私たちが来るのを待っていた仁人。
何度も言うけど別に待っててくれなんて私は頼んでない。
けど、さすがに今この状況で”普通の女子高校生”として見られてる以上はそんなこと言えない。
仁人の瞳をみればわかる。
何が言いたいのか。
多分、というより絶対。私はここから…”この世界”から逃げることは出来ないから。
ーーーガラッ!
大きな扉を仁人が開ければそこは体育館の半分ほどの大きさがある空間が広かっていて。
青、赤、緑、金、ピンク、オレンジ。
一言で言えばとても個性的な髪型と服装の人がうじゃうじゃと集っていて。
「「「お疲れ様です!!!」」」
つん裂く程の大声が倉庫内に木霊する。
「ああ」
「ただいま〜」
短くそれだけ言うと二階に繋がる階段に一直線に進む仁人と、元気に可愛い笑顔を振りまいて仁人の後を追うように歩いている青髪君。
”ただいま”か…。
懐かしい響きの言葉と雰囲気に心が緩みそうになる私はというと。
帰りたい衝動に半端なく駆られているけど、どうせいつかは連れてこられるんだから面倒なことはなるべく早めに済ませておきたい。
だから、自然と私の足は仁人と青髪君の後を追っていた。
「「「じ、仁さんが…おおおおお女連れてる!?」」」
誰かがそう言った。
いや、その場にいた全員が叫んだって言ったほうが正しいのか。
倉庫にいた全員に食い入るように見つめられて視線を感じないわけがない。
はぁ、勘弁してよ…。
心の中でつぶやいてみるも、仁人には届かず。
ああ。帰りたい。切実に。
