「黒崎仁人だ」
不意に聞こえてきた赤メッシュの声に思い出す。
ああ、そうだ黒山でも黒川でもなくて黒崎だ。
「そ。じゃあどこ行くか教えなさいよ仁人」
眠たくて瞼が開かないから閉じたまま話す私は常識がなってないのかな。
けど、こんな奴らに常識もクソもないか。
「フッ。まあお前はそれでいい」
今、私は何故笑われた?
しかもお前はそれでいいとかどんだけ上から目線なわけ?
私の質問にはいつまでたっても答えないし何様よ。
厳つい人に囲まれながらも堂々とくつろぎながら寝ようとしちゃってる私も私でどうかと思うけどさ。
ここまで私がアッサリしてるのも、きっと自分の中で答えがわかっているからかもしれない。
「倉庫」
ああ。もうほんと嫌になる。
誰とも深く関わらないと決めていたのにこんな車に安安と連れてこられる私も。
”倉庫”という単語だけでも通じてしまう知識を得ている私も。
これから起こることはなんとなく想像つく。
だけど、私に残されてる選択肢は1つだけ。いや、その選択肢を私は選ばざるを得ない。
私を連れて行くのは勝手だけど、後悔するのも傷つくのも全部貴方達よ–––––
なんてこの時は思っていたけど、彼らと一瞬でも関わったことを後悔するのは私の方だった。
