紅〜kurenai〜





家について考えてしまうのは



「お礼言い損ねたな」


いくら人と関わりたくないって思ってたって助けてもらったんだからお礼くらいは言わなくちゃ。




さっきの男に掴まれた感触がまだ腕に残る。


もちろん、黒髪に赤メッシュの。



きっと、普段の私なら腕なんて気にしないでお礼だけ言ってあの場を立ち去った。



なのにそれができなかったのは…



肌にピリピリと感じるあの威圧的オーラやムカつくくらい自己中なところや強引なところ。


そして何よりも–––––


あの冷酷な目。




一瞬あの人に見えて

戸惑ったんだ。







「あーあ、何やってんだろう」




未だに引きずる自分に自嘲的な笑みが零れる。







そのまま何も考えたくなくてベッドにダイブして目を閉じた。





皮肉なもんよね。

よりによってこんな時に、目を閉じた瞬間浮かんでくるのはアイツらの顔なんだから。








まだ、アレを置く勇気は私にはない。