紅〜kurenai〜






–––––––––––ゾワッ




ありえない程の覇気が俺の身体を包んだのは。



–––––––––––––ドクン



ありえない程に心臓の脈打つ音が頭に響いたのは。



そしてようやく目の前の現状を理解できた。



何故泡を吹いているのか。


何故、足が震えるのか。


何故…、俺が人より覇気に包まれるのが遅かったのか。




けれど、まだ何かが足りない。





この肌に感じる全身の毛を逆撫でするようなピリピリ感。


一瞬にして噴き出して自らの身体を伝う汗。


次第に息苦しく短くなっていく呼吸。









……何処だ。




何処かで一度、感じたこのとあるこの覇気。



何処だ、何処で感じたんだ…っ




はやる気持ちを落ち着かせ冷静に頭の中の記憶を探る。



けれど冷静になろうとすればするほど、身体が震え息がつまり、脳みそにまともに酸素を送れない状況の中、俺の頭の思考回路は低下するばかりだ。




……答えを見つけねえと。


……場所を探し当てねえと。






–––––––––何かを失ってしまいそうだ。





思い出せ…っ、何処だ…っ、



何処で感じたんだ…っ



…クソッ、思い出せねえっ…




「はぁ…はぁ…」




ヤバい…、息がッ…。




重力に逆らえず瞼が閉じた時




「–––––––っ」




脳裏にフラッシュバックした光景。




息が詰まり、頭に浮かぶ”マズイ”の3文字。



そして身体に感じる威圧が何かに弾かれた様に消えた。



……っ。


それでも微かに肌に感じる威圧。



なんで…っ


なんですぐに気付けなかったんだよ…!



群がる人をかき分け、あたりを包む強烈な覇気の原点を目指す中で鈍感な自分を責めずにはいられない。





こんなにも俺が良く知る覇気は他にないのに。


これ程の覇気を纏う人なんて1人しかいないのに。



…あの時、俺を守ってくれたモノなのにッ



なんで…、何でだよっ!!




ここまでデカくなった覇気に後悔が募るばかりだけど、責めるよりも咎めるよりもまず助けなきゃ。




なのに必死に人をかき分け見えてきた目的地に新たな不安が募る。



そんな不安、感じてる場合でも考えてる場合でもないのに。



俺が、救わなくてはいけないのに。




壊れてしまわないように


傷ついてしまわないように


後悔に苛まれないように





「…う、そうッ!」




あの時と同じ間違いをしないように。




「…蒼ッ、蒼麻ッ!!」




…蒼が、闇に堕ちてしまわないように。