《悠麻 side》
なんとなく。
本当に、なんとなく。
気づいてた。
蒼の様子が変だって。
何時もと同じ様に慶さんの所に顔だして19時過ぎにこの廃校に足を運んで気が済むまで殴りストレスを発散する。
他の人から見たら本当にいつも通りに見えるけど、蒼の片割れである俺からしてみれば何処となく違うんだ。
決定的な違いはわからないけど、何時もと違う。
それがいい方向に違うんだったら俺も嬉しいけど、この違和感に嫌な予感しかしないんだ。
まさかその予感が数時間後に実現するとは思ってなかったけど。
「行くか」
自分の欲望のために集まり拳をぶつけ合う無法地帯の渦に飛び込む合図が無意識に自分の口から零れた。
「くたばんなよ?」
チラッとニヒル顔で俺の方を見た蒼。
「当たり前」
頭の良さや人間性においては勿論、喧嘩でも蒼には勝てないことをわかってるからそう答えることしかできない事が悔しい。
そして、俺が悔しがってることすら蒼にバレてるんだからもうお手上げだ。
若干不貞腐れた俺を見て、フッと小さな笑みを残した蒼はそのまま渦の中へと消えていった。
どうか、何もありませんように。
ゆっくりと、そして堂々と歩く蒼の後ろ姿に不安が募った。
その不安をかき消すかのように強く、願い俺も蒼の背中を追いかけ渦の中へと飛び込んだ。
蒼の喧嘩はキレイだ。
無駄のないしなやかな動きで相手の急所を狙い一発で沈める蒼。
そのスタイルとは反対に俺はとりあえず相手が沈むまで気がすむまで殴り続けるスタイルだ。
蒼は無駄な動きをしたくないっていうけど俺にはその一発だけでストレスが発散されるのかが疑問だった。
けどまあ、毎回終わった後の蒼の顔を見ると心なしかスッキリしているように見えるので俺はそれ以上何も言わなかった。
そんな蒼みたいによく出来た人間じゃない俺は一発では収まりきれないストレスの塊を何発もの拳に分けて発散している。
蒼のキレイな喧嘩に憧れを抱いているのも確かだ。
一度、蒼みたいにしなやかな動きでキレイな喧嘩をしてみようと試みたけど終わった後の爽快感も発散したという実感も掴めず1日出来た終わった。
…俺にはこのスタイルがあってる。
数発殴って沈んだ相手を見て改めて実感した感じだ。
1人を沈めたことによって、目の前に転がる仲間なのか周りの奴らが一斉に俺に殺意のこもった目を向けてくる。
…そうそう、そうでなきゃ
つまんねえだろ。
「どっからでもかかってこいよ」
口角を上げ先ほどの蒼と同じようなニヒル笑みを零した俺に更に血眼になり一斉に襲いかかって来ようと一歩踏み出した。
それを見て、俺もスッと目を閉じ邪念を振り払う。
どこから来てもいいように神経を集中させる。
が、いくら待っても数々の拳が飛んでこない。
不思議に思い目を開けた瞬間思わず顔を顰めた。
「…どーなってんだよ」
何故か、地面に泡吹いて倒れている奴ら。
倒れていない奴らも震える足で必死に立っているのがやっとだって感じだ。
「おい、どうし––––––––」
近くにいた奴にどうしたか聞こうとした時だった。
