紅〜kurenai〜





「蒼〜、行こうぜ」


放課後、教科書などを鞄に入れていたらHRが終わって直ぐに準備を終えた悠が教室の扉から俺を急かした。



楽しみな気持ちは俺にもわかるがいくらなんでも早過ぎだ。



「後3分待て」



悠の方を見ずに鞄に荷物を突っ込みながら言った。


いつも以上に急いで準備を終え悠のところに向かう。


俺にしてはなるべく早くしたつもりだ。


なのに、


「遅え。」


と、若干不機嫌な悠。


俺が遅いんじゃなくてお前が早いの。


そう言いたい気持ちは山々だが口喧嘩になりかねないしコイツのご機嫌取りは面倒だから「はいはい」と流す。



そうすれば今みたいに少し不貞腐れながらもついてくる。



つか、3分すら大人しく待ってられないとかお前はガキか。と俺は思うけどな。


まあでも悠らしいっちゃ悠らしいけど、俺らだからできるやり取りでもある。



コレが他の奴だったらきっとキレてるんだろうな。

はいはい、で済ませられるのも相手が悠だからだ。




「え、蒼どこ行くんだよ?」


帰り道、そう言う悠には流石に俺もため息が出た。



「お前、バカ?この制服で行ったら面倒な事になんだろうが」



別にただ単に繁華街で買い物だったりゲーセンとか行ったりして時間潰して遊ぶなら問題ねえけど、俺らの遊びは問題ありまくりだ。


だから、繁華街行くときは何時も家に一度帰ってから私服に着替えて行くだろ。





…帰りたくねえ気持ち、わかっけどな。




「悠」



渋る悠を説得するように名前を呼べば投げやりになりながらも家の方向へと足を進めた。





何時からだろうか。


家に帰りたくないと思うようになったのは。




「…ただいま」



何時からだろうか。


”おかえり”と聞こえてくるはずの高い声が聞こえなくなったのは。




何時からだろうか。



「…酒くさ」


リビングを開けた瞬間アルコールが鼻に匂うようになったのは。




「母さん、飲み過ぎ」



何本目かもわからないビールを開けている母さん。

母さんが座っている周りにはビールの空き缶が大量に散らばっている。



アルコール中毒になり兼ねない量だ。


俺の声を無視して缶ビールをグビグビ飲んでいる所からして既に遅いかもしれないけど。



一応、俺の母親である以上は心配もする。




「母さんってば」



俺が帰ってきたことに気がついていない母さんの手からビール缶を取り上げて初めて母さんの目に俺が映った。




「ちょっと〜、何すんっのよ〜」



酒くさっ。


呂律が回ってなく目も虚ろ。



一体いつから呑んでいたんだ。