「その手、離せ」
背後から聞こえてきた鋭く低い棘のある声にピクリと反応する2人。
「チッ。来たか」
「黒崎…」
後ろを振り返り、若干顔を引きつらせながらも階段上を睨みあげている。
誰が見ても、この2人と階段上にいる黒崎と呼ばれた人が仲良いとは言えないオーラが漂ってる。
「ここがどこだかわかってんのか?!」
感情を剥き出しにする2人に対して、表情一つ変えずに鋭い視線で2人を捉え纏うオーラは半端ない威圧感があり、力の差は歴然としていた。
意地なのかなんなのかわからないけどそれでも私の手を離さない2人を見て静かに階段を降りて近寄ってくる。
「離せ」
1度目よりもさらに殺気を含んだ声。
その瞬間、締め付けられる感覚が消え私の手は解放された。
「失せろ」
「チッ…行くぞ」
あれ、意外とあっさりしてると思ってたら2人は元来た道を戻ってった。
正確には逃げてったか。
まあ、こんなところで殴り合い起きても困るけど。
なんて考えていれば。
「おい」
案外その声は近くで聞こえて少し驚きながらも目線を上げれば。
黒くーーー。
本当に綺麗で吸い込まれてしまいそうな漆黒の髪……けど、闇に染まらぬよう黒の中で自己主張を示す赤。
少し目を下げると。
小さい顔にうまくはめ込まれたパーツ。
ハッとするほど綺麗な顔立ちの彼は漆黒に赤のメッシュの髪型がこれでもかってくらいに似合っていた。
そしてーー。
目の前の彼が放つ独特のオーラ。
誰も寄せ付けない威圧感のある雰囲気を纏っているのに全ての人を惹きつけるオーラを放ち、鋭い切れ長の目は全てを見抜いているようで。
”敵に回したくない”
咄嗟に、誰もが思うことを私も思ったが私には関係ない。
