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「人の不幸を愉しむ”今”の悠麻を創り上げてしまったのは紛れもなく俺だ」
俺の話を相槌することもなく静かに聞いてくれる彼女に少しホッとしたけど
今は少し「悠麻を追い詰めたのはあんただよ」って責めてほしかった。
その彼女が意図的に作り出す沈黙が「お前のせいじゃない」そう言ってるように思えて仕方がない。
本当に自分勝手な考えだけど、責められた方がまだ楽だった。
「その次の日、悠麻はケロッとした顔で言ったよ。”中学受験するよ”って」
何事もなかったように。
昨日の事が嘘だったように。
「けれど、その日を境に悠麻の笑顔が消えた」
笑ってんのに、笑ってない。
目が、笑ってないんだ。
悠麻は俺のせいじゃないと言うけど。
自分が弱かったからだと言うけど。
そんな悠麻を追い込んだのは俺だ。
あいつがどんなに俺のせいじゃないと言おうと、そう思うことはできなかった。
「そのまま、予定通り中学受験は2人とも成功して名門校に通ったよ」
元々、頭の出来が良かったからすんなりと入ることができた。
なんとか丸く収まった。
そう思ってたけれど、それはただの俺の思い込みにすぎなかった。
あの時から”新名”は静かに少しずつ、壊れ始めていたんだ––––
決定的な崩壊劇はそれから半年後だった。
