紅〜kurenai〜




日本を代表するとまではいかないけど、今の日本の経済を支える財閥の一つには入っている新名財閥。


簡単に言ってしまえば、そんな財閥の子供が一般家庭と子供と同じ様な低レベルの学校に行って低レベルの授業を受けるのは世間から非難される。


要するに世間体の為に俺達は中学受験というものをさせられる。


そういう時代だ。


まだ、小6の俺達だけど周りの同年代の奴等よりかは多少知識もあり頭の中が発展していた。

だから大人の汚い部分にも気付いてしまう。


幼い頃から何度も目の当たりにしてきた。
厳しい縦社会。


それは親の代だけではなく子供達にも影響を与える。



それを嫌というほどわかっているから中学受験なんてしたくないんだ。



きっと名門校K高等学校附属中学校に受かれば、本当の俺達を見てくれる人は絶対にいない。


親の地位で俺達も見られる。


自分の親が俺達の親よりも地位が低いなら、気に入られようと媚を売りゴマをすり。

自分の親が俺達の親よりも地位が高いなら、俺達を下僕の様に扱う。

偉いのは自分じゃなくて自分の親。
それなのにあたかも自分が偉いという態度をとる。



これが、財閥界の現状だ。

まあこれから先もこの現状が直るなんて思ってもねえけど。


受かってもいないのに今からそんな事を考えるだけで憂鬱だ。
失敗すれば皆んなと同じ中学に行けるんじゃないかとまで考えてしまう。



失敗なんて新名には許されることではないのに。



何でも優秀で完璧な俺達で居なくてはいけない。


だから今までもテストの点もクラスで1番。
運動会でも徒競走では1番。
成績もクラスで1番。


何でも1番を求められ俺と悠はそれをこなしてきた。



そんな俺達を周りのみんなは純粋に誉めてくれて、わからないところ教えてと言ってきたり一緒に外で遊ぼうと言ってきたり。


気付いたら仲良くなっていた。


クラスの仲間と遊ぶのが当たり前になっていた。


完璧なんかじゃなくて、普通に皆んなと一緒になったはしゃいで泥だらけになって顔に傷作って。


あの時間が俺達にとっては何よりも大切な時間だったんだ。





新名財閥の俺と悠として俺達を見るんじゃなくてただの普通のクラスメイトで友達として見てくれていた皆んな。

その空間は何もよりも暖かい場所で知ってしまったら手離したくなくなる。

離れるのが嫌になるんだ。



俺達の通う小学校から俺達と同じ様にあの名門校を受ける人は誰1人いない。


必然的にクラスの友達とは会えなくなるのは十二分に理解している。


そして、その名門校では今の様に本当の自分を出す事が出来ない事くらいも。




あー、もう。

考え出したらキリがない。


どんなに俺達が嫌がったって俺達の決められたレールは変わらないのに。