紅〜kurenai〜




「見ねえ顔だな」


そりゃ、そうでしょうね。
今日転入してきたばかりなんですから。

ていうか「見ねえ顔だな」ってこの学校全員の顔を把握しているのかよ。


そんなことを思いながら、極力。
いや、心の底から人と関わりたくない私は言葉を発することなく目の前にいるダラシない所謂ヤンキー2人を一瞥して横を通り過ぎた。


「この時間にここを歩く事がどんな事なのか教えてやるよ」


案の定、素通りできるわけもなく掴まれている自分の右腕を見てため息が出る。

目立つことはしたくないんだってば。
極力とか出来ることならとかじゃなくて絶対に。
その為の”地味子”なんだから。
私は静かに過ごしたいのよ!!


「自分は地味だから絡まれないって勘違いしちゃあダメだよ〜。この時間にここに来るってことはそういうことなんだろ〜?」


ニヤニヤとしながらまとわりつく2人。


だから今日ここに来たんだからそんなの知るわけないでしょ。



「おい、アイツが来る前に行くぞ」


何だかんだ心の中で言ってる割に無抵抗な私に初めは戸惑いの色を見せた2人だが、何かに怯えてるのか急ぐように階段を下り始める。


その2人が下りれば、手を掴まれてる私も自然と下りなきゃいけなくなるわけで。


とりあえず、別に逃げる気ないので手を離してくれませんかね?
ゴツゴツとした手が無遠慮に私の腕を掴むもんだから気持ち悪くて振り払おうかとしたその時。